地上戦では最強の兵器、それが「戦車」。 この意味では究極の"Vehicle"な訳で、Electric Vehicleについて研究していく上でも、 この究極の乗り物を体験しておくのは、そこから何かを得て研究の役に立つはず。
というのは前置きで、たまたま先生の同級生に陸自に勤めている人がいて、その縁で 「戦車乗せてもらおうぜ」というのが本当のところ。実際「戦車」といっても身近な乗り物 ではないのが普通の感覚の人間。それがナニモノなのか知りたい、これは是非とも乗らなきゃ ならんと思うのは「普通でない人」の「普通の反応」だろう。
そう、俺らって普通じゃねぇ...だろ?
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90式戦車”きゅうまるしき”
日本で一番新しい戦車。自動装填装置付きの120mm砲に、セラミックやチタンを組み合わせた 複合装甲を持つ、最高水準の戦車だ。 お値段も最高水準で一台9億円。 約50tもの重量がありながら、前進70km/h以上、後退も2段変速で40km/h出る機動性を 備える。 見た目では、複合装甲のおかげでカクいのが特徴。 お値段と重量のおかげで、現在は北海道と富士山にしか配備されていないので、 これに乗るというのは貴重なことなんです。 |
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現在でも主力の74式。”ななよんしき” 倒れているのではなく、油圧によって傾けているところ。 90式も油圧で姿勢を変えられますが、こちらは上下と前後のみ。 74はこのように左右でも傾けられます。実際は、90式で 弾道計算の性能が良くなったので、左右は必要なくなった ということです。 砲塔(ターレット)の丸さは戦車らしくて格好いいですね。 105mm砲の脇に付いているのは赤外線の照射装置。 |
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ヘルメットを付けて、試乗開始。
小雨という戦車日和(?)ということもあり、 砲塔に登るにも足元には気を付けないと危ないです。 戦車には2人づつ。車長と砲手のハッチに立ちます。 |
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乗り込み中 標準姿勢で高さが2.3m、全体のサイズから考えたらそう思えないが、 決して低い高さではない。 そびえる120mm戦車砲はドイツ製をライセンス生産したもの。 こんな太い砲なのは、弾に回転を与えるライフル砲 ではなく、翼のついた滑空砲だから。 昼食後、戦車砲について詳しくご講義いただきました。 おかげで、参加した人はみな、妙に戦車砲の弾には詳しい という戦車砲博士になりました。 |
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ならんで、試乗出発。 左から90式、74式で、右端は73式装甲車。 いわゆる、歩兵を前線まで送り届ける戦場タクシー。 APCと呼ばれる車輌です。 73APCはアルミ製の車体で軽く、水上航行も可能。 ただ、アルミの装甲はアルミが高温で「燃える」という 性格から最近では敬遠され、今は採用する国もないとか。 それで「アルミなら次はカーボンでしょう」と、ちょっと考えたが、 あれはもっとよく燃えるんだ。そりゃ、だめだね。 |
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エンジン始動! 戦車のエンジンは、2ストロークのディーゼル21500cc。 どちらの戦車も21.5リッターですが、74は空冷、90は水冷。 それに、74式はメカターボ、90式はターボのあとインタークーラーで冷やして スーパーチャージするスーパーターボで過給しています。 生きるか死ぬかの戦場で、環境がどうのと言っている場合じゃありませんから、 ご覧の通りの排気。2ストになるのも、パワーウエイトレシオを稼ぐため。 |
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前述の73APC これは、駆動輪(起動輪)が前についている前輪駆動。 戦車は後ろについている。エンジンが後ろなので後ろにあった方が プロペラシャフトが不要な点では有利。 エンジントランスミッションは一体でパワーパックと呼ばれるもので、 エンジンが壊れた時には、クレーンのついた戦車回収車で丸ごと交換 してしまう。 |
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6輪のタイヤが付いた87式偵察警戒車 キャタピラの車を装軌式、タイヤを装輪式というが、タイヤはタイヤでも 弾を食らってもパンクしないランフラットなコンバットタイヤがついた 偵察用の車輌。このランフラットタイヤは、PAXのように小さなタイヤが 入っているタイプではなく、サイドウォールが分厚いタイプのもの。 いすずのトラックがベースだが、全輪駆動で前4輪が操舵する。 この時は、後4輪駆動、前4輪操舵というややこしい状態。 |
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前4輪操舵の様子
タイヤがついているおかげで公称100km/hが最高速。 公称で100km/hは、実際にはもっと出るので、高速道路で 警察に捕まっただの、捕まらないだの、そんな冗談も 出るような車輌。 この車輌、シンクロが傷んでいるのか、ギアが入りにくく 運転していた隊員の方、ひどく苦労してました。 |
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順番待ちの間は、質問タイム 試乗したのは平坦な場所ではなく、訓練をしている 文字どおりの荒れ地。 74式と90式を比べたら、90はセルシオ並みの乗り心地。 というのも、90式は片側6輪が全て独立懸架になっているのに 対して、74式は3つしか油圧がないから、当然のこと。 |
HTML by Shiro Matsugara